コミュニティの重要性が増している?コミュニティマネージャーの役割とは

コミュニティの重要性が増している

人々の行動は変化し、小さな集団が乱立するようになりました。ますマーケティングが機能するのは難しくなり、それぞれの集団に合わせたアプローチが必要になってきています。

大量生産大量消費の時代も終わり、商品開発のためにユーザーの協力が必要だったり、商品を買ってもらうためにファンになってもらう必要も出てきました。企業は様々な人の集団、コミュニティと継続的な関係を築く必要が出てきています。

こうした、コミュニティを対象として製品やサービスを販売したり、自社の事業を強めるアプローチは、大企業よりもスタートアップ/ベンチャーに合っています。日本の99パーセントを占める中小企業は、大企業では事業として成立しにくいニッチなコミュニティでもビジネスが成立する可能性があります。

こうした背景からコミュニティの重要性が増してきているのです。

コミュニティマネージャーとは

コミュニティ・マネージャーは、今、アメリカで最も注目される「新しい職種」のひとつです。アメリカでは、ソーシャル・メディア関連職に特化した求人サイトやヘッドハンター業が数多く誕生していますが、最近、米国企業では、業界、業種、規模を問わず、ソーシャル・メディア関連の役職が次々と設けられており、「需要が供給を上回る(求人の方が、実際にその役職を満たせる人の数より多い)」という事態まで起こっていると言われています。

そもそも、「コミュニティ・マネージャー」という言葉の意味は、「コミュニティ(共同体)」を「マネージ(管理する)」というものですから、社外(顧客、パートナー)と社内(社員、従業員)のいずれも「コミュニティ(共同体)」であると考えられますし、オンラインとオフラインの両方を含むものです。しかし、今日の時代的背景から、昨今では、企業の役職として「コミュニティ・マネージャー」という時、多くの場合「オンライン・コミュニティ・マネージャー」を意味するようになってきています。また、一般に、特定の企業やブランドが主導的に立ち上げた「プライベート・コミュニティ(閉鎖型コミュニティ)」のみを指すのではなく、フェイスブックやツイッターやその他のウェブ上のプラットフォームに存在するすべてのコミュニティ(オープン型コミュニティ)を包括します。

歴史的に見ると、コミュニティ・マネージャーの仕事は、IT企業やウェブ関連の新しいタイプの企業ではじめに導入されましたが、今では、かなり旧体制的な大企業(フォーチュン500級の企業)でも導入されてきているようです。しかし、新しい職種であるため、職務、権限や責任範囲などについては、企業によってばらつきがあり、「これ」といった絶対的な定義はまだ存在しないようです。また、「コミュニティ・マネージャー」の役職についている人の職歴や資格、経験も様々です。「コミュニティ・マネージャー」は、従来型の職種のように、特定の学位をとったからその資格があるというわけではなく、また、経験の面においても、これといって決め手となる必要条件があるわけではありません。

コミュニティマネージャーの仕事内容

Jeremiah Owyang氏が「コミュニティマネージャの4つの資質」をまとめており、コミュニティマネージャーの仕事内容を端的に言い表していましたので、参考にさせていただきます。

The Four Tenets of the Community Manager

1.コミュニティの推奨者(A Community Advocate)

コミュニティマネージャの役割の一つは、消費者を代表すること。企業コミュニティと外部サイトで発生する消費者の声を傾聴し、消費者のリクエストやニーズに応え、プライベート/オフィシャルの両方で関わっていく。

2.ブランド・エヴァンジェリスト

コミュニティマネージャはイベントや製品などを、トラディショナルなマーケティング戦術とディスカッションを用いてプロモートしていく役割を担う。コミュニティマネージャがコミュニティの中での信頼を集めていればいるだけ、ブランドへの信頼も高まる。

3.優れたコミュニケーションスキルと編集技術

コミュニティマネージャは、様々なコミュニケーションツールに精通しなくてはならない。また、コミュニティ内のスラングや専門用語も理解する必要がある。
議論が紛糾した際には調停者となり、特に批判者を適切に扱う。
また、コミュニティの「編集者」となり、数多くの社内のステークホルダーとの調整をしながら、適切なコンテンツを適切な時期に投稿し、やり取りをフォローアップする責任がある。

4.将来のサービスや製品開発に役立つコミュニティの声を集める

オンラインコミュニティ内では、リアルタイムで、フィードバックを与えることに積極的な消費者が多い。

コミュニティの構築・育成・管理は、特別なスキルを要します。強いて言うならカスタマーサポートに求められることと似ている、としばしば言われます。

とはいえ、コミュニティマネージャに求められる役割は企業によって様々です。wikipediaの「ブランドやコーズ(cause)に関するコミュニティを構築し、育て、管理する仕事」という表現がシンプルで良いかもしれません。

コミュニティマネージャーの年収/待遇

コミュニティ・マネジャーを「戦略系」職種としてとらえるか、または「実務系」職種としてとらえるかについても、企業によって大きなばらつきがあります。

コミュニティ・マネジャーが「戦略系」職種としてとらえられている場合、細かい話でいえば肩書きにも違いがあり、「ソーシャル・メディア・ディレクター」という肩書きをもちながら、その傘の中でコミュニティ・マネジャーの職務を満たすという場合もあります。このように、「戦略系」職種の場合、責任範囲も広く、また、与えられている権限も大きく、年収も10万ドルを超える場合も珍しくありません。

実際のところ、現在、多くの米国企業で、コミュニティ・マネージャーは「半戦略・半実務」系の仕事として捉えられているようです。それは、例えばソーシャル・メディア関連の職種に特化した求人などを見ると、「コミュニティ・マネージャー」という肩書きのついているものの多くが、「日々のコミュニティ活動の企画、管理、運営」というところに焦点を置いていることに反映されています。しかし、その中にも、コミュニティの「ライフサイクル」や「ライフステージ」を考えて、長期的な視野でコミュニティを進化させていくためにはどうしたらいいかという企画や方策を立案する、という側面もあり、これが、コミュニティ・マネージャーが「半戦略」系の仕事であるという所以です。ちなみに、このタイプの「コミュニティ・マネージャー」の平均的年収は6万ドルから8万ドルといわれています。

「コミュニティ・マネージャー」が、まったく「実務系」職種として捉えられている企業の場合、これらの職種がもつ職務や責任範囲、権限は非常に狭く、「コーポレート・ブログ」や、会社のフェイスブック・アカウントやツイッター・アカウントのライターとして活動しているといった程度です。これらのポジションには、正社員ではなく、パートタイム人員や、あるいはフリーランスの人が雇われている場合も多くあります。特に経験や資格を問わないため、四年制大学を卒業したての「デジタル・ネイティブ世代」が、年収3万ドルから5万ドルといった条件で雇われている場合が多く見られます。

このように、「コミュニティ・マネージャー」を「戦略系職種」として見るか「実務系職種」として見るかが企業によって異なるため、仮にコミュニティ・マネージャー自身が高い能力レベルやモチベーションを備えていても、企業によっては、コミュニティ活動の企画・管理・運営にあたる上でコミュニティ・マネージャーに十分な権限やリソースが与えられていないといった歪も出てきています。また、「コミュニティ・マネジメント」や「コミュニティ・マネージャー」をれっきとした企業活動の一環や役職として確立していくためには、「コミュニティ活動の成果」や「コミュニティ活動が事業活動に与えるメリット」を目に見える形で経営側に報告していく必要がありますが、「コミュニティ・マネージャー」がその方法を捻出できないという問題も起こっています。言い換えれば、企業組織内で成功する(認められる)「コミュニティ・マネージャー」は、「コミュニティ活動の成果」をステークホルダー(経営側、社内関連部門、顧客、パートナー、株主など)にアピールできるコミュニティ・マネージャーだということです。

もちろん、「コミュニティ活動の成果」をいかに捉えるかは、その企業の経営側が、コミュニティ活動のメリットを長期的なものとして見ることができるか否かによっても変わってくると思います。「コミュニティ活動」が、売上の増加や利益の向上といった短期的指標に与える直接的な影響を立証することはほぼ不可能(あるいは不適切)であることから、コミュニティの活動成果を測るものとして、いろいろな測定指標が模索、提案されてきています。

コミュニティマネージャーの現状

以下に、アメリカのソーシャル・メディア・エキスパートやコンサルタント、あるいは、企業で実際にコミュニティ活動に携わっている現職のコミュニティ・マネージャーたちの複数の見解をもとに、アメリカの企業がコミュニティ活動に期待していること、また、アメリカの企業において考えられているところの、コミュニティ・マネージャーの役割や責任範囲についてまとめてみました。

アメリカの企業がコミュニティ活動に期待していること(コミュニティの意義)

  • 顧客エンゲージメント:顧客が企業とつながる「場」を提供する。
  • 顧客の声の収集:自社が提供する商品やサービスについて、顧客からのフィードバックを収集し、新規商品/サービスの開発や既存商品/サービスの改善につなげる。
  • 顧客とのコラボレーション:企業が顧客の協力を得、双方のメリットにつながる新しいアイデアや、問題に対する解決策を編み出す「場」を提供する。
  • エバンジェリズム:エバンジェリスト(ファン)を見つけ、つながりを深める。また、新たなファンの育成に努める。
  • ロイヤルティ向上:顧客との意思疎通をよくすることで、ロイヤルティを高める。

コミュニティ・マネージャーの責任範囲(戦略系)

  • プラットフォーム・マネジメント:コミュニティを管理・運営するところの「システム」を管理する。コミュニティの目的を踏まえて、それを実現するのに必要なソフトや機能の定義、選択、あるいはアップグレードなどがこれに含まれる。
  • プロジェクト・マネジメント:コミュニティの企画・管理・運営をひとつのプロジェクトとして捉え、プライオリティやスケジュールを管理する。また、成果を文書化する。
  • プロダクト・マネジメント:コミュニティを「プロダクト」として管理する。例えば、複数のコミュニティが存在する場合、それらのコミュニティを一環して、顧客(ユーザー)のエクスペリエンスが一貫性を保つように努める。また、どのコミュニティに参加すべきかを判断する。
  • カスタマー・マネジメント:オンライン/オフラインに関わらず、顧客を増やすアウトリーチ活動、各種イベント、インセンティブの企画・運営。また、問題の特定と解決策の提案。
  • プロフェッショナル・デベロップメント:会社のソーシャル・メディアおよびコミュニティ活動の「顔」として、業界イベントに出席したり、ネットワーキングを行ったりする。また、ソーシャル・メディアおよびコミュニティ活動のベスト・プラクティスについて学んだり、ソーシャル・ツールのトレンドに常に目を光らせ、自社への導入メリットを検討する。
  • ブランド・マネジメント:自社のブランド・メッセージが正しく伝達されるように活動する。また、ブランドに関するフィードバックを収集し、それを社内に伝達する。ブランドに関するネガティブ・センティメント(苦情・悪評)をキャッチし、早期に対処することによって、リスク管理に努める。
  • スタッフ・デベロップメント:社内のコミュニティ活動に携わる人材を募集、採用し、育てる。
  • ビジネス・プランニング:コミュニティ活動におけるゴール設定や予算策定。また、自社の事業目的に沿ったコミュニティ活動の戦略企画。
  • コミュニティ・マネジメント:コミュニティ内の活動を企画・管理・運営する。これには、会話のモニタリング、ファシリテーション、ユーザーによる参加の促進、コミュニティ内の行動規範の定義と取り締まり、インセンティブ企画などが含まれる。
  • コンテント・プランニング:コミュニティ内のコンテントについて、市場・顧客調査に基づき、ユーザー(顧客)の興味をひくようなコンテントを企画・制作する。
  • 社内アドボカシー:世の中のソーシャル化の状況について、社内での啓蒙活動を行う。ソーシャル・ツールに関して認識を高めたり、トレーニングを行うだけでなく、社内の部門間の情報共有を促進するため、橋渡し役として活動する。

また、コミュニティの目的やフォーカスによって、コミュニティ・マネージャーに、以下のような専門分野に関する知識、経験、あるいは理解が要求されることがあります。

  • マーケティング
  • ブランディング
  • PR
  • 顧客サービス
  • テクニカル・サポート
  • 商品開発
  • 品質管理
  • セールス
  • ビジネス開発

ただし、コミュニティ・マネージャーが現実に上記の分野すべてに関する経験や知識を持ち合わせているケースは少ないと思います。そのコミュニティが上記機能のいずれかに特化している場合、あるいは、それにフォーカスがおかれている場合には、その特定分野における経験や知識をもった人がコミュニティ・マネージャーに選ばれるということはあるでしょう。しかし、多くの場合、現実的には、コミュニティ・マネージャーが、上記のような機能分野と密接なつながり(コミュニケーション・チャネル、協業体制)をもって、顧客の声をフィードバックしていく、顧客の声に対応する、あるいは、改善策を実行するなどの行動を円滑に行っていくことが求められていると思います。

コミュニティマネージャーの今後とまとめ

コミュニティ・マネージャーはまだ新しい職種であるため、今後、様々な試行錯誤を経て、より標準化された定義が確立されたり、あるいは、確固とした「スキル・セット」が定義されたりしていくと考えられます。

しかし、「職業」や「専門分野」として定着していくにはまだしばらく時間がかかるものと思われます。

間違いなく日本でも必要とされてくる職業の1つです。既にコミュニティ・マネージャ的な役割を担っている人は多いはずですが、今後さらに職種人口が増えていくことも予想されますので、キャリアの選択肢の1つにいれてもいいかもしれませんね。